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【読むヨガ】秋分 次候 蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)
2026年9月28日〜10月2日頃、七十二候は蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)を迎えます。
「蟄虫」とは、土の中などに身を潜める虫たちのこと。
「坏戸」は、穴の入り口をふさぐことを表します。
秋が深まり、朝晩の気温が下がってくると、虫たちは少しずつ活動を控え、冬を越すための準備に入ります。
春の「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」では、冬ごもりをしていた虫たちが外へ出てきました。
そして秋の「蟄虫坏戸」では、再び内へ。
自然は、活動し続けるのではなく、動く時と、休む時を繰り返しながら一年を巡っています。
休むことも、自然の営み
私たちは「動くこと」には価値を感じやすいものです。
働く。
学ぶ。
運動する。
新しいことを始める。
何かをしていると、前へ進んでいるように感じます。
反対に、休んでいると、「何もしていない」「時間を無駄にしている」と感じてしまうことがあります。
けれど、自然を見ていると、ずっと活動し続けているものはありません。
花は咲き続けない。
木々は葉を落とす。
虫たちは土へ潜る。
それは、何かを諦めたわけでも、止まってしまったわけでもありません。
次に動き出すために、活動を収める時間です。

ヨガにも「引いていく」時間がある
ヨガというと、身体を動かすアーサナを思い浮かべるかもしれません。けれど、ヨガには外へ向いている感覚を、自分の内側へ戻していく時間もあります。
目を閉じる。
呼吸を感じる。
身体の感覚に意識を向ける。
外から入ってくる情報から少し距離を置き、自分の内側で起きていることを観察する。
ヨガでは、感覚を外の対象から内側へ収めていくことをプラティヤーハーラ(感覚の制御・制感)と呼びます。
外の世界を拒むことではありません。
必要なときに外へ向かい、必要なときには内へ戻る。
その両方があることで、私たちは自分の状態に気づきやすくなります。
閉じることは、拒むことではない
「戸をふさぐ」という言葉だけを見ると、少し閉鎖的な印象を受けるかもしれません。けれど、虫たちは世界を拒んで穴を閉じるわけではありません。
今の季節に必要なことをしているだけです。
私たちにも、ときにはそんな時間が必要です。
誰かと話すことより、ひとりで静かに過ごしたい日。
身体を強く動かすことより、ゆっくり呼吸したい日。
新しい情報を得ることより、すでに自分の中にあるものを整理したい日。
いつも外へ向かって開いている必要はありません。
閉じることは、自分を守り、整えるための選択にもなります。
「何もしない時間」をつくる
前候の「雷乃収声」では、夏の雷が声を収めていく季節から、DoではなくBe「する」から「ある」へということを考えました。
蟄虫坏戸では、そこからさらに一歩、自分の内側へ向かってみます。
スマートフォンを置く。
目を閉じる。
呼吸を感じる。
しばらく何もしない。
何もしないと、最初は頭の中にいろいろな考えが浮かんでくるかもしれません。それを無理に消そうとする必要はありません。
ただ、自分が今どんな状態なのかを見てみる。
外からの刺激が少なくなることで、普段は聞こえなかった身体や心の小さな変化に気づくことがあります。
休むことは、空白ではありません。
自分へ戻っていくための時間でもあります。
スタジオからのひとこと
9月28日〜10月2日。
虫たちが活動を収め、土の中へと身を潜めていく頃。
私たちは、いつでも誰かとつながり、いつでも情報に触れられる時代に暮らしています。
便利である一方、意識が外へ向かい続ける時間も増えました。
だからこそ、ときには自分から「戸を閉じる」時間をつくってみる。
スマートフォンから離れ、外から入ってくる情報を少し減らし、身体と呼吸に意識を戻す。
何かを得るためではなく、自分の中に余白を取り戻すために。
ヨガの時間が、そんな場所になればと思います。
この季節は、「外から少し離れ、自分の内側へ戻るヨガを」
豆知識|蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)
「蟄」には、虫などが土の中に隠れて過ごすという意味があります。
「坏」はこの候では、虫が穴の入り口を土などでふさぐ様子を表すとされています。
ただし、実際の昆虫が一斉にこの時期から冬眠を始めるわけではありません。昆虫によって越冬の方法は異なり、成虫のまま冬を越すものもいれば、卵、幼虫、蛹の状態で冬を越すものもいます。
七十二候の「蟄虫坏戸」は、特定の昆虫の生態を厳密に示したものというより、秋が深まり、生きものたちの活動が次第に静かになっていく季節の姿を表した言葉です。
そして興味深いのが、春の啓蟄の頃にある「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」との関係です。
春には戸を開き、秋には戸を閉じる。
外へ向かう時があり、内へ戻る時がある。
自然にとっては、そのどちらも同じくらい大切な営みなのです。
