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【Blog】女医ヨガインストラクターSEIKOのヨガブログ:健康ってナニ?長年のモヤモヤ
毎週土曜日13時から コミュニティークラスでトリートメントヨガを担当している
女医 兼 ヨガインストラクターのSEIKOです!
今日は、健康ってナニ?長年のモヤモヤ、という内容で医師目線からお伝えします。
保険診療の医療現場に長らくいる私ですが、いつも人知れず思っていました。健康ってナニ?
自分の中にあるこのモヤモヤした気持ち・・・。
そして今、ヨーガの知恵に触れて思う事は、東洋的な考え方と西洋的な考え方に大きな違いがあるという事、それが私のモヤモヤへのヒントになるように思います。
基本的に保険医療では、西洋的な考えを基盤にしています。そして、医療現場においては、病気がないのであれば(当てはまっていなければ)それは健康だろう、と捉えることが多いです。つまり、100%完全な健康(※)、というところまでは目指していません。まずは不調の原因を判断する、そしてそれを減らしたり改善することを目指している、と言えます。
不調を訴える方が来院されると、具体的には次のような流れで対応します。
まず、不調の原因となる悪いところを見つけようと診察や検査をし、情報を集めます。
その結果、原因が明らかになれば治療となり、いくつかの方法から最適なものを選択します。
- 原因を直接的に取り除く。(例えば、手術で膿や腫瘍を取る等)
- 原因に的を絞って対応する。(例えば、胃炎に胃薬で対応する、貧血に鉄剤で対応する等)
- 的を絞ることが難しい時はもっと広い範囲に影響があるような治療法を選択したりします。(例えば、抗生物質、免疫を下げるような薬、放射線による治療等)
その人に最適な治療法を選択し決定するためには、専門家同士で議論したり、論文のデータ等などの知識を参考にします。そのやり方は、合理的で、誰が見ても明らか、説得力があると思います。
誰でも等しく高度な医療が受けられているのは、このような西洋的な考えから発達した現代医療のお陰ですし、その歴史における多くの先人の方々の多大なる尊い貢献のお陰です。そこに疑問の余地は無く、本当にありがたく素晴らしい事です。
ただ、人を診るというのは簡単・単純ではないことです。
脳について等分かっていないことも多いですし、この仕組みにも限界・課題があります。
たくさんの診療科があることで合理的に様々な不調に対応できる一方で、各診療科の対応できる範囲が狭まってしまうという側面があります。結果、どの診療科でも対応が難しいということも起きてきます。
例えば、ストレスや生活習慣、心からくる不調について。一つの専門分野だけで対応するのは難しく、診療科の枠組みを超えた対応が求められます。
また、病名がついていないような不調も、対応が難しくなります。
また実際の現場では、大規模の人を対象にしたデータの結果に囚われすぎず、個人差や本人の性格・特性をバランスよく考慮することが求められます。(例えば、データの結果を当てはめてその治療を選ぶことは合理的なようだが、本人の性格や特性からは、効果的ではないように思われる場合等。)
そして、医療の世界でも新たな試みは常に盛んです。
私が学生の頃、大学に東洋医学、心療内科という2つの診療科目が新設され、枠を超えた診療や東洋医学の診察という選択肢が増えました。
オーダーメイド医療という言葉も盛んに出てきます。これはDNAの情報からその人に効果が高い薬を選択する、ということを言っていました。
最近は整形外科で術後のリハビリにピラティスが取り入れられたり、診療所に併設されていたりするようです。
このように医療の世界でもサービスの選択肢が増えていると感じます。
そして、現在も常に大変目覚ましい変化が起こっているのですが
私の中にはスッキリ割り切れない、しっくりこない感覚があるのです。
というのは、特別な新しいアプローチというよりもあくまで西洋的なの視点をもとに人と病気を捉えている範囲で、何かを付け足している、ように感じるのです。
西洋的な視点では、心と体の繋がり、またその人自身の覇気や生命エネルギーのような(見えないけれど病気と関係しているように思われるもの)に対応するようなものが見当たらない、と感じます。何故なら、見えないものは不確かで研究もされにくく、科学的とは捉えられにくいからです。
東洋的な発想では、そんな見えないものを受け入れているように思います。
「病は気から」とか「笑う門に福あり」等は、私たちが当たり前のように持っている感覚ですが、心が感じていることの影響の大きさ、について教えてくれます。
そして、ヨーガの先生が教えてくれたインドの昔からの言いまわし
「心がオープンであれば、開胸手術(大掛かりな心臓の手術)は必要ない」、これは可笑しくジョークとして言われる表現なのですが、こういう感覚は東洋的なのかなと思います。証明できるものではなく科学的とは言えません。
個人的には心とか、雰囲気とか、見えていないけど感じ取れるもの、ストレスと病気の関係等も注目されるような事なのではないか、と漠然と感じていました。しかし、医療現場では私のこのような感じ方こそ、東洋的で独特で異なる捉え方、だろうとも思います。
特に表に出すことはなく、何十年と人知れず抱えていたモヤモヤ、、、、、。それは東洋的な発想をする私と西洋医学に基づく医療現場との間の埋められない溝だったのかも知れません。
ここに、ひとつヒントがあるような気がするのです。
西洋では心に問題があると考えるが、東洋では心そのものが問題だと考える。
これはカイヴァリヤダーマヨガ研究所の所長 O. P. Tiwari 先生の言葉です。
2023年12月、初めて訪れたインドで私はとても衝撃を受けました。西洋と東洋の考え方はこれ位大きく違うのだなと実感したのです。
ヨーガの文献の一つ、ヨーガヴァシシュタには
ヨーガは心を落ち着かせる手法そのものである、とあります。
私がヨーガの知恵に触れて驚いたのは、心について非常にたくさんの言及があり、そこに論理的な考察があることでした。
私にはそんなヨーガの考えや知恵には、西洋的思想から発展した現代医療(もしくは現代のライフスタイル)の課題を補うような、もっと広い意味の健康に繋がる鍵があるのでは、とも思えるのです。ただし、その効果はゆっくりです。
次回に続く☆
(※)健康とは、
YOGAによると健康は体、精神、魂が均衡して統合された状態であり、このバランスが崩れることが病気と考えられる。
WHOによる健康の定義では体、及び精神が良い状態であるだけでなく社会的幸福も必要とされている。魂とのバランスについては述べられていない。