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【読むヨガ】寒露 初候 鴻雁来(こうがんきたる)
2026年10月8日〜12日頃、七十二候は、鴻雁来(こうがんきたる)を迎えます。
「鴻雁」とは、雁(がん・かり)のこと。
秋が深まり始める頃、北の地域で繁殖した雁たちが、冬を過ごすため日本へ渡ってきます。
春の七十二候には、雁が北へ帰っていく「鴻雁北(こうがんかえる)」があります。
春に去り、秋に戻ってくる。
人の暦とは関係なく、鳥たちは毎年、季節の変化に合わせて長い旅を繰り返します。
鴻雁来は、「戻る」ということについて考えさせてくれる季節です。
戻る場所がある
私たちは「前へ進むこと」を大切にします。
成長する。
新しいことを学ぶ。
次の目標へ向かう。
昨日より今日、今日より明日へ。
けれど、いつも前へ進み続ける必要があるのでしょうか。
雁は季節が変われば、以前過ごした場所へ戻ってきます。
それは後戻りではありません。
今の自分に必要な場所へ、再び戻ってきただけです。
私たちにも、ときどき戻ることが必要なときがあります。

ヨガは「戻る」練習
ヨガをしていると、何度も呼吸へ意識を戻します。
考え事をしていたことに気づいたら、呼吸へ戻る。
周りの人が気になったら、自分の身体へ戻る。
ポーズの形ばかりを追いかけていたら、今の感覚へ戻る。
そして、また意識が離れたら、もう一度戻る。
集中が途切れないことが大切なのではありません。
離れたことに気づき、戻ってくること。
その繰り返しがヨガの時間にはあります。
迷っても、また戻ればいい
私たちは、心が乱れたり、集中できなかったりすると、「今日はヨガができなかった」と思ってしまうことがあります。
けれど、心が動くこと自体を止めるのは簡単ではありません。
大切なのは、気づくこと。
「あ、別のことを考えていた」と気づいたら、また呼吸へ戻る。それだけです。
自分を責める必要もありません。
最初からやり直す必要もありません。
今いる場所から、戻ればいい。
雁が季節を巡って再びやってくるように、私たちも何度でも自分へ戻ることができます。
戻ることは、同じ場所に戻ることではない
春に日本を離れた雁が、秋に戻ってきます。
けれど、春と秋では季節が違います。
その間に雁たちも旅をして時間を過ごしています。
同じ場所へ戻ってきても、まったく同じではありません。
私たちも同じです。
以前学んだことに戻る。
基本のポーズに戻る。
シンプルな呼吸に戻る。
一見すると同じことを繰り返しているようでも、経験を重ねた今の自分で向き合うと、以前とは違うものが見えてくることがあります。
だから、戻ることは、後退ではありません。
戻ることで初めて、自分がどれだけ変化したのかに気づくこともあります。
自分の「基準点」へ戻る
忙しい日々の中では、知らないうちに意識が外へ外へと向かいます。
誰かの評価。
たくさんの情報。
仕事や予定。
「こうした方がいい」という周囲の声。
それらに触れ続けていると、自分が何を感じているのか分からなくなることがあります。
そんなときは、一度自分の基準点へ戻ってみる。
呼吸はどうなっているのか。
身体は疲れていないか。
今、自分は何を感じているのか。
ヨガは、特別な自分になるためだけの時間ではなく、自分自身へ戻るための時間でもあります。
スタジオからのひとこと
10月8日〜12日。
北から雁が日本へ戻ってくる頃。
何かを続けていると、つい「もっと先へ」と考えてしまいます。
ヨガでも、難しいポーズ、新しい知識、より深い練習へと進みたくなることがあります。
けれど、ときには基本へ戻ってみる。
ただ立つ。
ただ座る。
ただ呼吸を感じる。
そこには、以前は気づかなかった感覚があるかもしれません。
遠くへ進んだからこそ、戻った場所の見え方が変わることがあります。
この季節は、「何度でも、自分へ戻るヨガを」
豆知識|鴻雁来(こうがんきたる)
「鴻雁」は、大型の雁を意味する「鴻」と、雁を意味する「雁」を組み合わせた言葉です。七十二候では、秋に北方から渡ってくる雁の姿を表しています。
日本で見られる代表的な雁には、マガンやヒシクイなどがいます。主にロシア極東など北方で繁殖し、秋になると越冬のため日本へ渡ってきます。
雁の群れが空を飛ぶときに見られるのが、V字型などの隊列です。斜め後方を飛ぶ鳥が前の鳥の羽ばたきによって生じる上向きの空気の流れを利用することで、長距離をより効率的に移動できることが知られています。
そして春になると、七十二候の「鴻雁北(こうがんかえる)」の頃、再び繁殖地である北方へ向かいます。
春には北へ帰り、秋には日本へ来る。
七十二候は、雁の長い旅を二つの季節から見つめています。
自然は、ただ前へ進んでいるのではありません。
行って、戻る。離れて、また巡ってくる。
その繰り返しによって、一年は続いていきます。
